学校の教育現場で教員が不足しているというニュースをよく目にします。
しかし教員採用試験での倍率が「1.0倍」を切ることは基本的にありません。つまり採用試験に落ちている人はいるわけです。
それでも教員不足の状態になってしまっていることに疑問を持つ人もいるのではないでしょうか?
教員といっても2種類あります。「正規教諭」と「講師」です。そして教員不足の原因は「講師が不足している」ということのようです。
正規教諭と講師とは
学校の先生になるためには主に2つの方法があります。
教員採用試験に合格する方法と、教育委員会に講師登録をする方法です。
多くの教員は教員採用試験に合格しています。
しかし中には教員採用試験に合格していなくても、学校で教員として働いている人もいます。それが講師です。
講師が集まらない理由
正規教諭も講師も、仕事内容は基本的には同じです。
ただし扱いが少し違います。
正規教諭の場合は雇用期間は無制限です。しかし講師の場合、雇用期間は基本的には1年です。
まずこの部分が非常に大きな違いとなります。
雇用期間が決められてはいるのですが、基本的には契約は継続します。継続するのですが、やはり不安定であることに変わりはありません。
雇用期間を理由に契約を打ち切られてしまうケースもあります。
契約継続の有無は直前に知らされる 不安を募らせてしまう
都道府県や学校によっても異なるかもしれませんが、講師が次の年度に契約が継続するか否かは、学年末近くになってからわかります。つまり新学期直前の2月や3月の時点です。
- 来年もこの学校でお願いします。
- 来年はあの学校でお願いします。
といった話を学校長などから受けます。
この「直前」というのが大きな問題なのです。
もし契約が続かない場合には、次の年度からの仕事がなくなってしまうのです。知らされてから1ヶ月~2ヵ月以内に次の仕事を決めなければ生活していけなくなってしまうということです。
当たり前の話ですが、このようなことは正規教諭ではありません。
契約は基本的には継続するが・・・
先ほどもお話ししましたが、講師としての仕事は基本的に契約は継続します。余程の問題を起こさない限りです。
しかし毎年、可能性として契約の打ち切りはあり得る話です。
学校以外の一般社会では、一度正社員になったらなかなかクビになることはありません。少なくても先の生活を担保できるのです。
ところが学校の講師はそういった状態ではないのです。一般社会の契約社員と同じなのです。
そのため、安定な生活を考えるのは難しいですし、将来を安心することができないのです。
だから講師を避けようと考える人がいるのです。
教育現場の都合
講師は学校では欠かせない存在です。
それは病欠、産休、育休など、正規教諭が学校を短期的にでも長期的にでも休むことはある話です。
そのようなとき、代わりとなる先生がいないと学校は回りません。
だからこそ、講師の存在は非常に大切なのです。
急に教諭を増やすことはできない事情
そもそも急に正規教諭を増やすことはできません。なぜなら教員採用試験は毎年1回しかないからです。
そしてあまりにも余分に採用するわけにもいきません。変な話、必要なくなったときにクビにすることができないためです。
となると便利なのが講師というわけなのです。つまり教育現場の完全な都合なのです。
ある意味、教育現場が困っているから助ける気持ちで講師として働く人もいると思います。しかし扱い的には正規教諭よりも劣ってしまうのです。
そうなってくると、望んで講師をする人は少なくなるのは当然のことです。
講師の存在意義に気づいていない教諭が一部存在する
正規教諭の中には、講師に対する偏見を持っている人がどうしてもいます。
「採用試験に合格していない人」
と思っている人です。
実際、採用試験に合格しておらず、将来的には先生として働きたいと思っている人が経験を積むために講師として働いているケースは多いです。
そのため講師は比較的年齢が若い人が多いです。
教員採用試験に合格していないため、採用1年目に受ける初任者研修というものを受けていない状態です。初任者研修では学習指導や学級経営、生徒指導など、学校で先生として働く上でのイロハを担当教員から付きっ切りで教えてもらうものです。
繰り返しますが、その初任者研修を講師は受けていません。何も知らない状態なのです。
そのため、周りの先生から「何も知らない人」と突き放されてしまうことがあります。
もちろんいろいろ教えてくれる先生もいます。しかし一部では、「教える=自分の仕事が増える」ため、あまりかかわりを持ちたくないと考える人もいるのです。
比較をされることがある
講師の中には、ベテランの講師もいます。
以前は教諭として働いていたが、結婚や引っ越しなどさまざまな理由で一度退職をし、再び講師として学校に勤務をしている人たちです。
そういった人は一通り学校での仕事の方法を知っています。
そういった人と比較されることがあるのです。
すべてを解決するためには講師の扱いをよくする必要がある
解決策は意外と簡単です。講師として働きたいと思う人が増えればよいのです。
そのためには講師に対する手当てを手厚いものにするしかありません。
- 契約期間
- 給与
- 教諭への指導
これらをまず何とかする必要があるでしょう。学校が困っているから講師に助けを求めているわけですから。
そしてこれを現場の教員にも周知させる必要があります。講師がいないことのしわ寄せは少なからず自分たちに来るということを現場教員も強く認識するべきです。
そもそも先生であるならば、講師に対する偏見を持つのは避けるべきです。
繰り返しますが、偏見を持っている先生は一部です。しかし少なからず存在します。
また講師もある程度強気で仕事をするべきだと思います。
「採用試験に合格していない」や「教諭の方が立場が上」など、引け目に感じる必要はありません。
なぜなら講師を必要として困っているのは現場であり、講師が助けているわけですから。
講師経験が採用試験に影響をすることが問題でもある
ただしここで1つ問題があります。講師経験が採用試験で有利に働くというものがあります。
つまり講師として働いている間は、問題をなるべく犯したくない、失敗をしたくない、周りの先生に嫌われたくない・・・と、どうしても考えてしまうものなのです。
真偽は定かではありませんが(教頭先生から聞いた)、講師時代に問題行動を起こしていると採用試験に合格できないと聞いたことがあります。ブラックリストのようなものが存在するとのことです。
だからこそ、どうしても講師は思い切って働きづらいということもあります。
講師経験が採用試験にプラスに働くことは良いことですが、マイナスの要因となりえてしまうと、やはり講師希望者は少なくなってしまうことでしょう。
よってこのあたりも何とかすべきでしょう。
私自身も講師として働いていた経験を持っていますが、辛いことはありました。しかしあるときから開き直って楽しんで働いていました。
そして教諭にもどうしようもない変な人がいる・・・と割り切ってからは楽になりました。
遅くまで学校で仕事をしている先生はいました。でも私は定時付近に帰っていました。
また休日出勤している先生は結構いました。でも私はほとんど休日出勤をしたことがありません。
しかしこれらのことで誰かに注意をされたことがありません。されたとしても仕事の時間が終わったら帰る、仕事のない日に職場に行く必要はない・・・といった考え方でよいと思います。
ちなみに生徒の保護者から苦情を受けたこともありません。
私の真似するべきとはいいませんが、いちいち周りの先生のことを気にしながら働いていたら身が持ちません。自分のペースで楽しく働くのがよいのです。
追記 副業をOKにすれば講師は集まる
追記としてですが、講師を集める有効な方法を思いついたので記しておきます。
それは「副業をOKにすること」です。
基本的に地方公務員である学校の先生は副業は禁止となっています。
世の中には学校で働いている人の中に、教員免許を持っている人はたくさんいます。ただし天秤にかけた上でほかの仕事を選んでいるのです。
「ただし1日数時間、もしくは1週間で数日学校で働けるなら働きたい」
と思っている人はたくさんいます。
とくに自営業者であればある程度時間に融通が利きます。また塾の先生あたりもよいでしょう。
このあたりが柔軟になれば、教員不足というものはすぐに解消することでしょう。